論理の裏返し

夜中にふとテレビをつけると、変な番組をやっていた。
芸能人が変な仮説を主張し、それに学者達が同調したら、研究費という名目のお金がもらえるという番組だった。
はじめから見ていなかったので、タイトルは分からなかったが、とりあえずタイトルはどうでもいい。
その中で、ある統計を出して、睡眠は健康によくないという仮説を主張していた。
その統計というのが、睡眠時間が7時間未満の人と10時間以上の人を比較すると、
心臓疾患による死亡率が倍も違うというのだ。
これだけを見ると、睡眠時間と心臓疾患に相関性が有るように思える。
また、一般の人はきっとこれを見て、寝過ぎるのは心臓に良くないと簡単に信じてしまうだろう。
しかし、この主張には大きな問題点がいくつかある。
まず、心臓疾患が有る人は一般の人より疲れやすいんじゃないだろうか。
つまり心臓疾患があったら、睡眠時間が延びるってことはないだろうか?
だとしたら、睡眠時間の長さは心臓疾患の結果であって、原因じゃない。
また、睡眠時間が長いというのはたとえば他の疾患があったりしないだろうか。
単純になんらかの疾患で入院している患者は睡眠時間が長いだろう。
別の疾患が原因で心臓に負担をかけるのはよくある話だ
この場合、睡眠時間と心臓疾患は一つの原因からの二つの結果にすぎない。
また他にも、睡眠時間が短い場合、無理をしている可能性が高いので他の疾患が増えて、死亡原因として心臓疾患になる可能性が減るのではないかということも考えられる。
つまり、二つのデータに相関性がある場合、
どちらかが原因でもう一方が起こっていると簡単に断定してはいけない。
・結果と原因が逆になること
・別の見えない原因が二つの結果を起こしていること
・原因が別の結果を引き起こしその結果が問題としている結果として現れること
など十分考えなければならない。
医学に限らず、こういった話では、この因果関係の逆転や別の原因からの二つの結果、因果関係の長さという可能性を
ちゃんと排除できるような統計の取り方を考えてやらなければならない。
また単純な統計から安易に結論を導き出すのは厳に慎まなければならない。
統計ってのはどんな嘘でもつけるので、数字がでているからといって、無条件にその結論を信じてはいけない。
たとえば、喫煙者と非喫煙者の認知症(いわゆる痴呆症)の発生率を比較すると
きっと喫煙者の方が認知症の発生率が低いとでるんじゃないだろうか。
もし、こういう結果が出たとして、だから喫煙は認知症の予防になると言えるだろうか。
実は喫煙者は非喫煙者より寿命が短く、認知症になる前に死んでしまって、単に認知症になれないということなのかもしれない。
たしかに、ある意味予防ではある。
早く死んでもいいから、認知症にはなりたくないって場合は、喫煙すればいいってのはいえるかもしれない。
しかし、普通これは予防になっているとは言えないだろう。
すべての病気の予防には、自殺がもっとも効果的ってことになってしまうのが認められるわけがない。
「なになにをする子は成績がいい」「こういう人は癌になりにくい」 など世間で言われている数々の主張は今一度ちゃんと考えて見た方がいいと思う。

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