アメリカのジョークでこういうものがあった。
ある大学(アメリカンフットボールの名門といわれている)に、
アメリカンフットボールのスター選手(多分クォーターバックQB)がいた。
すでにプロから声がかかって、卒業後はプロチームにいくことはほぼ確実といわれるほどの選手で、チームの大黒柱である。
しかし、残念なことに、学業の成績はすこぶる悪かった。
それでもこの選手がいないと、チームが勝てないということで、これまでの教官はしかたなく、ぎりぎりで合格ということにしていた。
しかし、ある英語(日本でいえば国語)の教官がどうしてもこの成績では合格にはできないと言い出した。
そこで困ったフットボールチームの監督は、この教官になんとか追試を受けさせてくれるように頼みにいった。
そして必死に懇願し、なんとか追試を受けさせてもらえるところまではこぎ着けたが、それでも、監督は心配でたまらない。
追試を受けたからといって、合格できるとは思えなかった。
そこで、さらに、教官に、どういった試験をするのか聞いた。
教官は、単語のつづりのテストにすると答えた。
これより簡単なテストは思いつかない。
それでも、まだ、合格できると思えない監督は、さらにどんな単語を出題するのか聞いた。
しかたなく、教官は「コウフィ」(Coffee)と発音するから、それを正しくかけたら合格にしてやると答えた。
それでもまだ不安な監督は、さらに粘って、
C,O,F,Eのうち1文字でも入っていたら合格にしてくれと頼んだ。
教官は、あまりの監督の熱意に負けて、渋々それで合格にすることにした。
やっと安心した監督は、教官に礼をいい、本人には問題を教えないという約束をして帰った。
翌日、学生が英語の追試を受けた。
そして、なんと不合格になってしまった。
監督は教官のところに、約束が違うと抗議しにいった。
すると、教官は無言で解答用紙を見せた。
そこにはこう書いてあった
Kauphy
******
ちょっと長かった。
このジョークをみて、たしかにこのつづりなら、「コウフィ」になるし、C,O,F,Eのどの文字も入っていない。と感動した覚えがある。
日本語では同じような話をつくるには漢字の書きとりになるだろう。
実はこのジョークは、日本語と英語と中国語くらいしか成立しない。
他の言語は発音と文字はほぼ一致している。
もちろん例外はあるのだが、コーヒーなどの簡単な単語で、複数のつづりになる余地がほとんどない。
ましてや、1文字も重ならない表現ができる可能性はほぼ0といっていい。
たとえばフランス語でカフェといったら、caféと書くが、eの上の点(アクサンテーギュという)を忘れるくらいしか可能性がない。
日本語のカ行にはほとんどcを使う(kは文字としては存在するけれどほとんど使われない)「ア」という母音は、a以外には考えられない。
「フェ」にいたっては、fé以外にほぼありえないといっていいだろう。
(ちなみに点を抜いてfeと書いたら、「フ」という発音になる)
中にはソレイユ(soleil:太陽)という様なわかりにくいつづりもあるが、
「イユ」といったら、illかilなので、これも間違える可能性は低い。
読まない文字がたくさんあるのがフランス語の特徴なので、音から文字に直すとき、忘れる文字があるかも知れないが、全く違う文字にすることはないだろう。
つまり、C,A,F,Eを1文字も使わずにカフェと書いてみろといわれたらフランス人は困ってしまうはずである。
他の言語では書きとりのテストというのは考えにくい。
(少なくとも小学生のレベルでしか存在しえない)
中国語の場合、音から文字には可能性がたくさんあるけれど、現代中国語では、かなり文字を減らして、同じ音は同じ字になるようにしているらしい。
(文字の意味は残っているので、すべてがそうではない)
しかし、文字から音は一つに決まる、同じ文字を複数の読み方をすることはほぼない。
その点、英語と日本語は、音と文字が多対多で対応するので、読めない、書けないということが多数発生することになる。
一つの文字に複数の音があり、一つの音に複数の文字がある言語は、日本語と英語が代表的である。
ともに言語の中に大量の外来語が含まれるため、もとの言語の表記と音が一緒に入ってきたもの、音だけで入ってきたもの、表記だけで入ってきたもの、時代がずれて入ってきたものなどがいり交じって、こういうことになっている。
まして日本では固有の文字がなかったので、外国の文字を使って固有の言葉を表現するというかなりアクバティックなことをやってしまったから、余計にややこしい。
(韓国語ももしかすると日本語と同じ様なことになる?)
日本の子どもは世界で最も難しいこの二つの言語を学習しなければならない。
世界で最も不幸なのかもしれない。
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